ミスコロンビア(松原 操)思い出のアルバム
「浮き草の唄」「十九の春」「気まぐれ涙」「秋の銀座」「並木の雨」「河原ススキ」「ヒュッテの一夜」「月のキャンプ」「峠の雨」「真白き富士の根」「乙女鳥」「「そんなのないわ」「旅の夜風」「悲しき子守唄」「母の歌」「一杯のコーヒーから」「港の歌」「愛染夜曲」「朝月夕月」「乙女七人」「日本よい国」「愛染草紙」「荒野の夜風」「新妻模様」「目ン無い千鳥」「楊柳芽をふく頃」「大空に祈る」「三百六十五夜」 コロンビアAL・5070~1
ミス・コロンビア・松原 操の歌謡曲のSP録音を復刻したセットである。彼女は昭和6年に東京音楽学校を卒業し、クラシックの声楽家として活動していたが、コロンビアにスカウトされ歌謡曲も歌うようになった。
彼女の歌を聴いていると、かつて存在したが今はもう失われた日本女性の美徳、純情、可憐、清楚、貞淑といった要素をその歌唱の中に昇華し結晶化しているように思われる。大げさな言い方になるかもしれないが、西洋音楽の歌唱において日本らしさ、日本的スタイルがここに確立しているとみることができる。そして彼女以後、これ程、日本的な良さを感じさせる歌手は出なかった。その意味でまことに貴重な記録がここにあるといえよう。
また、彼女のノンヴィヴラートの発声を聴いていると、ヴィヴィラートというのは、あってもいい場合もあるという程度に理解すべきことが痛感される。中世ルネッサンスの宗教曲等でヴィヴラートがあると困る場合はあっても、逆にヴィヴラートがなくてはならないという曲はないのではないかということである。
ところで、1970年代以後にコロンビアから発売されたこの種のSP復刻盤には以下の3種の音源が混在している。すなわち①昭和30年代に復刻したものをテープで保存していたもの。②1970年代以後に新たに金属原盤から復刻したもの③市販のSP盤から1970年代以後に新たに復刻したもの(いわゆる板おこし)。この場合②がすばらしい音質であることが多く、①については、テープの経年劣化のため音質がよくない場合が多い。松原操の復刻盤は他にも出ているが、この3種の音源が混在しており、「旅の夜風」等 有名曲は①によるものが多くて音質がすぐれない。その点このセットはすべて③で統一されているようで、ものによってはノイズが多かったり音が歪んだりしているが、先述の「旅の夜風」等は他の復刻盤におけるものより音が良い。とにかく、曲は同じでも、他の盤とは復刻の方法が異なっているので、その点だけでも存在価値のあるセットといえよう。