「海と陸と空と」
三鷹淳、国立男性合唱団、陸上自衛隊中央音楽隊
編曲・指揮 須摩洋朔 コロンビア ALS-138
「若鷲の歌」「軍艦」「戦友」「空の勇士」「勇敢なる水兵」「燃ゆる大空」「暁に祈る 」「同期の桜」「艦船勤務」「露営の歌」
三鷹淳と男性合唱による歌を陸上自衛隊の吹奏楽が伴奏したものである。戦後ステレオ時代に発売された軍歌の多くはいいかげんな編曲やだらしない歌唱で聞くに耐えないものが多い。そんな中にあって、当盤は、編曲を須摩洋朔が担当している点が第一の成功の理由であろう。彼は陸軍軍楽隊の出身で、しかも作曲編曲にも戦前からその才能を発揮してきた人である。「愛馬進軍歌」を行進曲に仕上げたのも彼であるし、戦後「大空」を自衛隊のために作ったのも彼であった。当盤でも原曲のよさを生かした格調高い編曲がさすがに見事で他のいいかげんな盤とは冠絶している。彼自ら指揮する陸上自衛隊中央音楽隊も力強さと気品を兼ね備えて好演しており、そこには重厚悲愴な、海軍軍楽隊とは違う軽快明瞭な陸軍軍楽隊の伝統が感じられる。三鷹淳も彼自身の後の盤(「心にのこる正調軍歌集」コロンビアAX-7275等)とは比較できない程好調で若々しい美声をきかせている。往年の藤山一郎や伊藤久男等の域にせまる名唱といえよう。合唱もヴィヴラートをおさえたスッキリとした発声が好ましい。録音は、1960年代初頭のステレオとしては良好と言えるが低域がやや不足気味なのと、吹奏楽のバランスがやや弱いのが惜しまれる。1962年発売の10インチ盤。(文:中西康雄)